俺、ラクガキ [作者:龍蛇]
■1
明日は引越しだ。埃まみれの想い出をここにおいて、僕はこの家を出て行く。
僕は、晴彦。みんなにハルって呼ばれてる。
母「押入れの中、凄く汚いわよ、ハル。片付けちゃいな。」
ハル「分かったよぉ。もう・・・」
古臭いものがいくつもある。ありすぎて手のひらじゃ抱えきれない。
ハル「・・・?」
小さい箱があった。そこには汚い字で、(おもいでばこ)と書いてある。
そっと、埃がたたないように開ける。ゆっくり、ゆっくり・・・
何かおかしい。だって、中が全くといっていいほど汚れていない。
埃なんか、ひとつまみもないし、それに・・・
ハル「・・・動い・・・てる?」
確かに蠢く何かがあった。こっちを見て笑って、何か言ってる。
耳を、限りなく澄ます・・・
その後、光がハルを包む。
ハル「なんだぁ・・・!?」
「ドサッ」っと軟らかい何かに落ちた。
女「大丈夫ですかぁ?やっと気づきましたね。良かった。」
ハル「此処は何処?私は・・・ってそれは分かるけど・・・」
女「此処はあなたのラクガキの中の世界。いわば『ラクガキ王国』です。」
ハル「俺のラクガキ?あなたは?」
女「この世界の住人『マリ』です。よろしく。」
↓目次
【1】→【2】→【3】→【4】→【5】→【6】
|