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愛のことば2  [作者:ユウコ]

■ 1

「朝だよ。起きて」

眩しい陽の光に照らされた僕の瞼。
なかなかいうことをきかなかったが無理やりこじ開けた。
僕の顔を覗き込む君がいた。

「あ・・・・・・うん」

僕は寝ぼけながら返事をする。

「ご飯できたよ。さ、食べよ」

君は細い腕で僕の身体を起こす。戦争が始まって早、5年が経つ。
飢饉にも近い食料不足のせいで僕らの身体は痩せ細ってしまった。

僕はちゃぶ台の上に乗せられた質素なご飯を前にした。
そして、君と向き合って手を合わせた。

「いただきます」

食事の時間は何も喋らず黙々と目の前にあるおかずを片付けていく。
ただでさえ食料が足りないのだから、しっかり噛んで食べないと空腹が満たされない。
僕らは刻々と過ぎる毎日を生きるだけでも大変だ。
配給の車が来るか、空爆を知らせる警笛がならない限り外にから一歩も出ることもなかった。
用もないのに外を出歩いて体力を消耗するなんて馬鹿なことはしない。

「あのね・・・・・・」

君は箸を止めて僕をまっすぐ見据えた。

「何だい?」

「う・・・・・・」

「え?」

「海、見に行こうよ」

まるで、駄々をこねる子供のような瞳をしていた。
僕はもしもの為と思い極力動きたくなかったが渋々承諾した。
なんせ、いつもは慎ましく僕の面倒を見てくれている君がこんなことを言うのは初めてだったから。

そして、君と一緒に近くの海へと出かけた。

 



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