スノーマン 〜ただ春を待つ〜 [作者:たぬき]
雪がちらちら降っている。
太ったお腹。バケツの帽子。枝の腕。枝の鼻。枝の口。枝の眉。石の目。
僕は君に創ってもらった。ありがとう。
お庭で、完成したと喜ぶ君。たたずむ僕。
今日は大粒の雪が降る。
僕は一回り大きくなった。
君はお庭で雪のお家を作ってる。お兄ちゃんも一緒。
楽しみだね、完成。
今日は晴れてる。
昨日の晩もずぅっと雪が降ってたから、お庭は雪でいっぱい。僕のお腹も少し隠れる。
今日はお父さんも一緒に雪のお家作り。大きいのができるかな。
日が暮れると皆、四角のお家に帰った。今日はシチューだって、お母さん言ってた。
夜は星がきれいだな。
今日も晴れてる。
昼の間に僕はほんの少し小さくなった。
雪のお家が完成した。良かったね。良かったね。
お家の中ではしゃぐ君とお兄ちゃん。いいなぁ。
今日は粉雪だね。
君はお父さんとお母さんとお兄ちゃんと一緒に、どこかに出かけちゃった。
悲しいな。寂しいな。
昼になったら晴れてきた。君はこの太陽の下で何してるのかな。
僕はまた少し小さくなったよ。
夜になって帰ってきた。ぐっすり寝ている君を、お母さんが抱きかかえて四角の家に帰った。
今日はちょっと吹雪いてる。
お父さんとお兄ちゃんが雪かきしてる。君もやりたいの?
小さなスコップで一緒に雪かき。大変そうだね。
夜が来た。いつもより遅く来た気がする。
雲間から月がみえた。
今日は誰もお庭に来ない。君も来ない。
どうしてかなぁ。
四角のお家から君の声が聞こえた。
「春、まだかなぁ…?」
春?
最近暖かくなってきてるから、きっともうすぐだよ。
おしりの下で、草花がうずうずしてるしね。
僕もだいぶ、ちぢんできたしね。
明日僕は君に会えるかな。僕はいなくなってないかな。
春が来たら、僕もう君に会えないのかな。
太陽さんがまた僕を照らす。僕だけを照らしてるようにも感じるよ。
石の目のあたりが溶けてきたのかな。目が熱いな。
ぽたぽた。ぽたぽたぽた。
君は僕を、笑った顔に創ってくれたのに。悲しい顔になっちゃったよ。
――ああ、太陽さん、僕を照らさないで。
でもコレは春の知らせだよね。
よかったね
よかったね
でも、君にも僕自身にも、お別れのときがきたのかな。
明日君に会えないみたいだね。
さようなら
さようなら
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