スピッツの歌詞解釈のコーナー

冷たい頬 by semi


(注) 歌詞 でありません。曲の意味を勝手に解釈したものです。

    泣きそうになったあの帰り道には想像しなかっただろう。


    彼女は言ったんだ。


    「あなたのことを 深く 愛せるかしら」


    僕は現実を確かめたくて


    冷たい風に吹かれている あなたの頬をさわった。







    
    あの日の帰りも


    いつものように胸のざわつきがやってきて離れなかった。


    あの天使のような微笑みが 目の前の夕日の中に溶け込んだ。


    僕は葛藤していた。 この世に生を享けたものとして。


    叫びたかった。


    泣きたかった。



    
    彼女は天性の前向きさと明るさを内に秘めた 天使だった。


    いつも僕を惑わすその素振りもだれにも咎めることはできない。


    そして僕は 彼女の誰にもみせることのない


    泣き出しそうな顔を 知っていた。



    あの日 彼女はまた 僕に複雑な想いを抱かせたまま


    どこかへ行ってしまった。


    あたたかい日差しのなかで触れた頬は


    また 夢となって気分をぼんやりさせた。


    ただただ感覚に残る冷たい頬は 現実味を帯びていた。


    
    それなのに。


    彼女は誰のものでもない。


    あの悪戯に僕を惑わせる目だって 誰のものでもないんだ。


    彼女は自由で 僕になにかを おしえてくれたんだ。


    夢のようで現実的で泣きだしたくなるような「何か」を。



    いつしか僕は気づいたんだ。


    二人の距離がどれくらいか違ったところで


    変わるものがあっただろうか。


    君は天使か ときに女神で。


    僕の気持ちは変わることはない。


    そうなにも変わることはない。


    いつしか僕はそんな気持ちで彼女を見つめていた。


    そんな満足感と少しの虚無感とを交差させて。






    ― 虚無感と化していた架空の日々は突然きたんだ。






    だから僕は さよならを告げなければいけなかった。


    花言葉とともに 大事にしていたシロツメクサに。


    手帳に眠る一人よがりな言葉たちに。




    そして今 君をたしかめるんだ。


    その冷たさに 君を確認するんだ。


    暖かい日差しの中 君の冷たい頬 だけが 僕の現実。


    優しさは 午後の日差しと僕の手のなかにある。



semiさんからの投稿です。