スピッツ|花泥棒
スピッツ歌詞TOPスピッツコラム>ヒバリのこころPV解釈

ヒバリのこころPV解釈 (by いち子)

「あのヒバリにもう一度会えたなら」
いつかの旅立ちの時、僕の背中を押してくれたのは
春も間近な草原に舞いあがった名もないヒバリの歌声だった。
今また、同じ季節がめぐってきた僕には、もう一度あの声が
必要だったのかもしれない。

「よし、あのヒバリを探しに行こう」
記憶をたぐり寄せながら、まだ冷たい風の中、僕らは車を走らせた。

郊外に出て、宇宙と交信をしているという噂の「ナントカ研究所」の
巨大な3基のパラボラアンテナの脇を通り、
田んぼの中をまっすぐに走る道を、海へと向かう。
ゴルフ打ちっぱなし練習場のグリーンのネットを超えると川があり、
白い橋を越えて、ただひたすら走る。
左手に朽ちた廃墟が見え、そこからは特に何にもない草原が続く。
ああ、僕の記憶の通りだ。

「この辺りかもしれない」
海辺にほど近い野原で、僕はひとり車を降りた。
丈の長い草むらをかき分けて歩いていった。
もしそのヒバリが願い通りにそこにいたなら、
そっと走って戻り、みんなをここに呼んできてやろうと思っていた。

ああ、やはりそうだ。
間違いなくこの場所だ。
あの日に見た、古いつり橋の鉄柱らしきものがまだそこに横たわっている。
ただ、辺りにヒバリが飛んでいる様子はなく
いくら空を仰いで探してもどこにも見つからない。
僕には昨日のことのように思い出せるのに、
時間の穴だけが、あの日と同じ風景にぽっかりと空いてしまっているかのようだった。

がっかりして振り返ったら、いつの間にか奴らが追いかけてきていて、そこに立っていた。
「残念だが…」
帰ろう、と言いかけた途端、

「あれ、なんか聞こえねえか?」
   …?!  
「どっかに飛んでるんじゃないか?」
   …いないって 気休めはやめてくれ。
「ああ、聞こえる聞こえる!!」
   …聞こえねえだろ!  

「見えねえけど、ヒバリはちゃんといるらしいぞ、良かったな〜!!」

こいつらぁ、
見え見えなんだよ。
…でも、そういわれると本当に聞こえてくるような気がしてくるから、不思議だ。

そのまま車に乗り込み、走った。
海が近付くにつれ、僕の耳の奥では
あの日のヒバリの声がさらに鮮明に甦ってきていた。

気が付けば目の前には、無邪気に砂浜ではしゃぐヤツらと、
やっと次の旅立ちの踏ん切りがついた僕、
そして、薄い太陽の光を受けて輝く早春の海が広がっていた。

--------------------------------------------------------------------
解釈のテーマは「原点回帰」です。

強い気持ちを与えてくれた声のあるところへ「帰る」
待っていてくれる仲間の元へ「帰る」
生命の源である海へと「帰る」

帰るところがあれば安心して次のステップを踏み出せる、
そんなイメージで「ヒバリのこころ」のPVを観ています。


   
コンサートチケット