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遥かPV解釈 (by いち子)

ある朝、誰かに見られているような気がして、ふと目が覚めた。
「おなかがすいた」
枕元には赤いりんごがぽつんと落ちていた。
それを手にすると心も体も満たされ、
私は歩き出すことができた。
それだけで満足だった。
満たされて、始まりの時代を歩いていた。

やがて時の階層を昇るエレベーターに差し掛かる。

次の時代では、ランプを手に入れていた。
「全てを知りたい」
暗闇を照らす明かりは、物事の輪郭を浮き上がらせ、
好奇心を満たしてくれた。
それで満足だった。
満たされて、二つ目の時代を歩いていた。

次の時代ではかごの小鳥と一緒だった。
かごの中で小鳥は羽ばたくこともなく、エサをはみ、歌を歌う。
「可愛いくて、楽しいな」
それまで私は寂しかったのだろうか。
これで満足だった。
幸せな気持ちで、三つ目の時代を歩いていた。

今度のエレベーターの中では、誰もが立派だと思える金の時計に出会った。
「手に入れたい」
かごの中の小鳥を引き渡した。腕が軽くなったような気がした。
交換できて、満足だ。
幸せな気分の中、四つ目の時代を歩き始めた。

思いがけない出来事だった。
金の時計は、突然去っていった。今度は一頭の馬と交換だ。
少し惜しい気がしたが。
馬は自分で歩いてくれるだけでなく、私を助けてくれるかもしれない。
「一緒に歩きましょうか」

しかし、進んでいくうちに馬が動かなくなった。
考えることもせず私は手綱を離した。
こうなってしまったら、もういい。さよならだ。
「何も持たないほうが気楽でいいさ」
それで幸せだったはず、なのに。

次の時代へと繋がるエレベーターの中には、
いつか見た赤いりんごがぽつんと、私を待っていた。
五度目の扉が開き、遥か向こうには、もう一人の自分が立っているのが見えた。

思い返せば、
りんごは腐ることもあり、
ランプは炎が消えてしまったりした。
小鳥はかごから逃げ出したり、
まばゆい財宝はいつも誰かに狙われている。
なんとか乗り越えてここまで来たが、
やはり馬も…!
これから先もずっと困難なことが続くなんてまっぴらごめんだ。

「もうお仕舞いにしよう」
私は全てを誰かのせいにして、りんごを投げ返したのだが…

傷ンデモ、痛ンデモ、
アナタハ、ワタシヲ、ワスレナイ。

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赤いりんごは、生命
ランプは、智恵
小鳥は、愛情
金の時計は、富・名誉
そして、馬は仲間のイメージです。


   
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