スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

若葉物語 (作者:りこ)

若葉物語 【2】

「あれ?また泣いているの?また、いじめられたの?」

きょとんとした顔をした純に、私はとっさに抱きついた。
優しくてあったかい、純の匂い。ホッとしたらまた涙がこぼれてきた。

「あのね、今日ね、しいちゃんね、頑張ってね、うっぐ・・えっく・・お友
達にねっ、おはようって・・・言ったの・・・」

「うんうん。」

「そしたらね・・・みんなにね・・・・気持ち悪いって・・・うぇ・・
っ・・・ぇぐ・・」

「そうだったんだ。でも、雫は偉いよ。ちゃんと勇気を出して挨拶できたん
だ。頑張ったね。」

「しぃちゃんね、頑張ったの・・っ。」

そろそろ自分のこと、『しぃちゃん』て呼ぶのやめた方がいいと思うけど。
と思ったけれど、僕は何も言わなかった。

「ほら、もう泣かないで?」

「うん・・・でも・・・悲しいよ・・・・・。」

「ごめんね。僕も小学校に行ければいいんだけどさ。」

「純も学校行けたらいいのに・・・・。でも純、大好き・・・。」

「僕も大好きだよ。ほら、顔あげて・・・。」

「っは・・・あは、くすぐったいよ純・・・!」

純はいつも私が泣いたら、ほっぺたにチュッてしてくれる。
純は優しい優しい、私だけの味方なんだもん。



「・・・・・ほら、もう大丈夫かい?」

「もう大丈夫!ありがとっ!」

涙がしょっぱかったけど、まぁいいか。泣きやんだし。
雫はいつもこうだ。学校から帰るたびに泣いている。
どうやら友達?とかいうやつらとグループでつるんでたけど、何がきっかけ
か自分でもわからないうちに、はぶかれて、いじめの標的になったらしい。

それってきっともう、友達って言わないと思うんだけどね。
でも雫はあきらめずにまだ友達だと信じて、毎日声をかけたり、気を使って
いるらしい。馬鹿だよな。ほんと馬鹿・・・って思っても、言わないけど。
ね。

りこ 著