スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

楓〜kaede〜 (作者:ホワイトラビット)

楓〜kaede〜【5】

さよならっていう単純な一言。
さよならって言う短い一言。
さよならって言う暖かいような寂しいような一言。
さよならって言う大切な言葉。
「きろっか。バイバイ、また会おうね。」
「うん。」
「さよなら。」
あっ・・・。
先に言われてしまった。
しかも嘘を言った。
逢えるかわからないのに、うんと言った事、はる・・・。ごめん。
ぼくはいつもうそをついてきた。渚にあったとき名前を間違えてお母さんのみよじを言って、間違えたのがはずかしくてそのまま安藤だと思われてたこともあった。
じぶんがバカに思えてきた。
もう、このまま消えてしまいそうなほど、胸がギューっとなった。
はるに逢いたい、いっちゃんに逢いたい、そして・・・、渚に。
そして、あやまりたい。
嘘をついたこといままでのこと。
「まって。」
ぼくは、口からことばをもらした。
「今度、いつ逢えるかな?」
聴きたかった。はるのこえが。
「いきなりどうした?」
はるはビックリしていたようだ。
「なんとなく、約束したかった。」
この言葉は嘘じゃない。ぼくの、このいまのたったいまの気持ちだ。
どうしても、はると会う約束をして、必ず逢いたいんだ。
「じゃあ、今度の日曜日、こっちにこれる?」
はるはいった。その日ちょうど残りの荷物を取りにいく日だ。
「うん。はるんちによるよ。いっちゃんと渚と一緒にまってて」
ぼくの今の顔はとてもにこやかな表情をしているはずだ。
やっぱりいまの僕の顔は赤だ。
でも、せつなくてはかない色じゃない。
早くときがたたないかなってあせってる色。
でも、やさしい色。早く、はるといっちゃんと渚に逢いたい、そんなねがいの色。
早く逢いたいな♪

ホワイトラビット 著