スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

楓〜kaede〜 (作者:ホワイトラビット)

楓〜kaede〜【4】

とうとうこの日が来た。
みんなとお別れの日。
いっちゃんやはる、渚ともお別れだ。
もういっちゃんとも、はるとも渚とも
一生逢えないかもしれない。
早くも3年生でこの気持ちを知ってしまった。
このなんともいえない悲しみ、苦しみを。
みんな僕が車に乗るのを見て最後の挨拶をした
「バイバイ。」
みんなで一斉に言った。
3回ぐらい言って
一回目はいっちゃんの声が
二回目ははるの声が
三回目は渚の声が
異様に大きく聞こえた。
渚の声はまだ響いている。車に乗って、東京についたときにも。
その日の夜、はると電話をした。
「かっチャン(楓)が言っちゃった後、渚、すっごい泣いてたよ。」
はるは、まじめに言った。
「えっ?」
僕は声をもらした。
「いや、『はる・・・。もう楓に逢えないんだね』って。眼、腫らして泣いてたよ。」
僕は、それを聞いて眼から熱いものがこみ上げてくるのを感じていた。
泪だ。前に、渚が泣いていたように。僕は、顔が熱くなった。
いま僕の顔は真っ赤なのだろう。
渚の笑顔とはまた違う楓の色をしているのだろう。
せつなくてはかない色。
そして、いっちゃん、はる、渚、先生、他のみんなを想うやさしい色。

「大丈夫?もしかして泣いてる?」
「・・・。ううん。」
僕ははるに嘘を言った。このジーンとこみ上げてきている気持ちを
はるはきずいているのだろう。こういってくれた。
「泣きたい時は、電話して。力になれる事はちからになる。電話きろっか?」
「ありがとう。はるといっちゃんはずっと僕の友達だよ・・・。じゃあ・・・。」
僕は、感情を抑えきれず、最後のことばが言えなかった。

ホワイトラビット 著