スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

オケラ (作者:えりんこ)

オケラ 【1】

夜七時。古びた小さな自治会館

季節はずれの威勢のいい声

はじかれる札

読まれる札

ここは万年正月

なぜかって?

見てればわかる。








「ったく、いっつも強いよねー」

「あぁ、ありがとう。」

「もう勉強とかなら君に勝てるのに!」

「…失礼だなー」

「ウソウソ…」



若い男女の会話に似合わぬ図太い声が響く。


「ほらー集まれー!」


その声の主の元へと急ぐ二人。

そして女の子があいさつをその声と同時に頭を下げる男の子。

「はい、お疲れーもうすぐ君たちにも受験っちゅうもんがせまっているんだ
ぞー」

「…」

「少しは自覚して…」

「はーい。」

「亜希子はそこまで心配いらないよなー…」

男の子はさっと視線をそらした。

「駆!おまえはーかるたしかないじゃないか!どうすんの!」

「ば、ばれました?」

「ばれましたっつっとる場合じゃないだろ!」

「はーい。」

「じゃあ今日はこれで終わり!」

「お疲れ様でした!」


2人は勢いよく外へ出た。


「あー楽しかった!」

「アキー…お前を恨む。」

「な、なんで?」

「お前はいいよなーカルタも強けりゃ成績も学校1だろ?」

「…カルタは駆に負けるよー」

「俺にはカルタっきゃないもん。」

「そうだよねー駆からカルタを取ったらね、何が残るんだか!」

「し、失礼なやつ! もういいや、じゃあな!」

「うん、バイバイ!」



ふたりはさっと別れた。





「真野駆か…面白そうなやつー」


小さな声がした。


「へっくしゅん!」

駆のくしゃみが飛び出した。

えりんこ 著