スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

青い車 (作者:53)

青い車 【5】

僕は、仰向けの彼女の首を掴んだままの格好でしばらく硬直して、
それから、あえぐように言った。

「親父が」
「うん」

「親父が・・・死んだ・・・」
「知ってる」

「おれ、おれ」
「うん」

「死にたくない・・・」
「うん」

そこで僕はやっと、彼女の首から両手を離した。僕はいつの間にか泣いていた。
目の前が、潤んで見えなくなっていた。
せっかく目を覚ました彼女の表情さえも。


「怖かったね」
彼女が起き上がって、僕を抱きしめる。そのあったかさがやけに胸に染みて、
僕は子供みたいに泣いた。

泣いたの、いつ以来だろう?


「怖いもん、怖いもん、みんな怖い。死ぬのは、怖い」
僕が泣く間、彼女は母親のようにして、僕の髪を撫で続けた。


・・・。

53 著