スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

ひなたの窓はどこに (作者:仲野フレン)

ひなたの窓はどこに 【1】

ひとつの国が終わりを迎えようとしている。

灰色の雲が日光を遮断し、灰色の雪がしんしんと降り積もってゆく。

溶けることのないその雪は今では建物を飲み込み、一面を灰色の大地が覆った。

一部、かつて超高層ビルと呼ばれた建物の上層階だったと思われる部分が埋まらずに残っているが、それは金と権力を持つものたちが独占した。しかし、それらの建物が雪に埋まってしまうのも時間の問題だった。

日光がなくなり、数少ない生き残りの人々は、昼を忘れ、太陽を忘れ、光を忘れた。

人々の見る景色も、そして心の中も灰色の景色が覆っていた。




そんな国の、かつては「スペースシャトル発射基地」と呼ばれ、最新の科学が集合したという地――今では一面灰色の雪の大地と化しているが――に、人一人入る位のカプセル型の物体がものすごい速さで落ちてきた。そのまま地面にぶつかるかと思いきや、地面から10メートルくらいの高さから急にスピードを落とし、静かに着陸した。



「なんてことだ・・・」

女は愕然とした。女のその髪はきれいな銀色一色だった。

装置は機械的な声で
『外ノ、気温、マイナス50ド、外ニ出ルノハ、危険、外ニ出ル場合ハ、防護服、ヲ、着用クダサイ。外ノ、気温・・・』
という言葉をくり返す。

「ここまでひどくなっているとは・・・」

しかしカプセル内にとどまっているわけにはいかない。女は防護服を着て、大きなリュックサックを背負った。

「頼む、生きててくれ、母さん」

女は小さくつぶやいた。誰もそのつぶやきを聞くものはないのに。

仲野フレン 著