スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

タイム・カプセル (作者:えりんこ)

タイム・カプセル 【27】

「ふわぁぁあ!」


草野はむくっと体を起こした。


「みーき…おりょ?」


未紀を呼ぼうとしたが、見あたらない。



「てか、俺帰ってきたのか! ただいまー」


立ち上がってコップ一杯の水を飲む。


「俺は無事に帰ってきたってことか!そっかー!」


納得した。でも、なんとなく寂しい。


「うーん…なんとなく寂しいなぁ…そーだ!田村ん家に!」


草野は部屋を飛び出すと、田村の家へ向かった。


「ピーンポーン、田村ー!ピンポン、いないの〜?ピンポンピンポン」


「うるせぇなぁ!!」

勢いよく扉が開いた。


「いたんなら早く返事してくれよー!」

「気が短いなぁー人がでるところだったのにー…そういえば未紀ちゃん
は?」


「あぁ…もうなんか帰っちゃったみたい!」

「どういうこと?まぁ入って!」


草野は田村の家に上がり、居間の適当なところに座った。


「俺もね、たいむすりっぷっていうのしたんだ!」

「はぁ??」

「なんかね、普通に寝てたら未紀ちゃんの部屋にいて、未来ちゃんに会って
きたー♪」

「どうだった??」

「相変わらず可愛い…w それに、なんか俺のこと最初から分かってたみた
いなのに、嘘ついてね…」

「ははは!未来ちゃんらしいや!」

「未紀ちゃんも分かってたくせにね…俺のこと騙したんだぞー!」

「お前はそういうキャラだもんね〜」

「なんで?? でもね、ひとつ気になったんだよね…」

「何?」


「なんか未紀ちゃんがこっちに来たときに俺らのCD聞いてたみたい。」

「あのヒバリのこころ?」

「うん。で、俺がこっちに帰ってくる前にヒバリのこころを流してたんだ
よ…」


「たしか、未来ちゃんのときもだっけ?」

「そうだ!やっぱり俺らのCDってタイムカプセルなんだよ!」

「えー嘘だろ〜」

「いや!俺は信じる!じゃあ、帰るわ!」


「お、おい!草野!」


田村の家を走ってでて、すぐ家に戻った。

買ったばかりの新しいCDラジカセを引っ張り出し、ヒバリのこころのCDを入
れて聞き始めた。


「やっぱり恥ずかしいなぁ…」


そういいながらもウトウトと眠り込んでしまった。

えりんこ 著