スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

タイム・カプセル (作者:えりんこ)

タイム・カプセル 【11】

辺りはすっかり暗闇に包まれていた。

道路は繁華街のにぎやかな光と電柱柱からの小さな電灯で照らされている。

その中を未紀と草野は歩いていた。

「田村もひでーよなぁ…」

草野がボソっとつぶやいた。

「でも、ありがとうございました。」

「え?なんで?」

「母が正宗さんに大変お世話になっていたようで…」

「いや!そ、そんな〜!(嬉しいけど)しっかりしてるね〜未紀ちゃんっ
て」

「いえいえ。そんな…それにしても母とつながりがあったなんてビックリで
す!」

「あはは…はぁ。。。」

さっきの空気と一転して、草野はため息を漏らした。

「でもな…会いたいなぁ…未来ちゃんに…」

無理だよなーなどと軽くつぶやくと、未紀はそんな草野を見て元気を出して
もらえるように冗談を言った。

「じゃあ!私が!私が会わせてあげます!」

「ほ、本当に!? 嘘でしょ…はぁ。。」

「そ、そんなことないです!絶対絶対です!」

「信じてもいいんだよね!」

「もちろんです!」

(やばい、どうしよう…ノリでこんなこと言っちゃったよ…あぁ…)

もちろんと答えてしまった未紀は心の奥底で後悔していたのだった。



「ついたよー♪ ここ俺んち!」


そんなことを思っているうちに、草野の家に着いたようだ。

アパートだった。モダンというにはふさわしくない、ちょっと古いアパート
だった。


「ちょっと待ってください。」

「え?どうしたの?」

未紀は思い切って言った。

「あの、母から聞いたのですが、台所汚いんですか?」

「そんなこと…あるわけないじゃーん!」

(未来ちゃん、あんなことまで喋ってたのか… どうしよ!)

「そうですよね〜!母の言いすぎですよね?」

(ヤベヤベ、どうしよう…未来ちゃんのバカ!)

冷や汗をかいた草野と後悔した未紀はアパートに入っていったのだった。

えりんこ 著