スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

テレビ (作者:ひかる)

テレビ 【1】

ママと知らない男が、また我が家のテレビの前でラブラブしている。
なんで、二人はここにいるんだろう?
5才の美加にはわからない。
美加のママは離婚していて、二人暮しのはずだった。
なのに、‘知らない男’が急に家に上がりこんできて、
こうしてこの家を占領したのだった。
でも、ママは嫌がったそぶりもせず、パパでもないのに食べては寝る生活を送っていた。

「もうすぐあのアニメが始まるのに・・・」
この様子じゃ、当分は見れそうにない。
「そうだ!」美加は突然思いついたかのように、裏の倉庫場へ行った。
「ここは立ち入り禁止ってママが言ってたっけ」
なんでだろう、とは思っていたけど、今まで入ったことはなかった。
「ここに入ったら、ママも私に気がついてくれるかなあ」
単純にそう思った。

ガラガラガラッ!
重い扉を開けて、中を覗きこんだ。
何年も開けていなかったからか、勢いで砂ぼこりが舞った。
古い箱を開けると、分厚い本が出てきた。
なんだろう・・・
開くと、文字がいっぱいしきつめられていた。
美加はまだ平仮名もあまり読めないのに、これは英語でもなく、
イタリア語でもなく、ポルトガル語でもないことが、なぜか不思議とわかった。
その瞬間、大きな光に包まれて
その何語かもわからない文字を、勢いよく読みだしたのだった。

ひかる 著