スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

コスモス (作者:ゆうり)

コスモス 【1】

「何で先に…」

僕は言葉はそれ以上出なかった。

君の前では涙なんか流さないって決めてた。
それに君も「私の前で泣かないでね。見てるとつられちゃうからさ」
って言ってたし。

だけど、家族の次に大切な君を失ってしまったんだから涙は出てきて当たり前なんだ。
僕の流れた涙は君の顔に落ちていく。

まるで君が泣いてるようだった。

そんな風に見えてしまった僕はもう顔を見ることさえ出来なくなった。


まだ出続ける涙を必死にこらえて僕は病院から出た。
―まだ元気な頃の君の笑顔を思い出しながら。





あの日から数年が経過した。

僕は君の毎年お墓参りは欠かさずに行っている。
それに気づいてくれてるかな?
そう思いながら僕は君の一番好きだった花…コスモスをお墓に供えた。
君の名前はコスモスを漢字にしたときの1字をとったのかな?
だって君の名前は「桜」だもの。


「どっちかというと春っぽい名前だな…」


今頃気づいた僕はそう呟く。
桜という名前を思い出すと同時に、たくさんの記憶がよみがえる。
涙も一緒に流れてきた。


誰もいないけれど、恥ずかしくなった僕はうつむいてしまった。
地面には1匹のアリがいた。
元気に餌を探して歩き回っている。


何故なんだろう…
アリを見てるだけなのに、すべて桜のことを思い出してしまう僕がいる。


高校の時まではなんでもなく、アリみたいに元気いっぱいで常に動いていたなぁ。
それにたくさん食べていたのに細くてスタイルは抜群に良かった。
性格も明るくて誰からも好かれる、そんな人だった。

数年間忘れていたことを、今ここに来たことで全てを思い出した。

楽しかったことも、辛かったことも…。

ゆうり 著