スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

僕のギター (作者:朱音)

僕のギター 【7】〜完結

弦を弾いて音を奏でてみた。
チューニングもされていない音は綺麗なものではなかった。
耳に大きく響いたのは、俺が音に対して敏感になっていたからか、それとも。
防音がされてない部屋だったからそれ以上音を出すのは止めた。
意外に冷静な自分に苦笑した。

歌いたい、と心の底から強く願った。
思い切りギターを弾いて、スポットライトの下でもう一度歌いたいと思った。
思っても、どうしようもない諦めに包まれて心が乱された。
落ち着こうと、思い切り深く深呼吸をした。
心の中にメロディがあふれてこぼれそうになって、
その代わりにひとつぶ涙が落ちたのは、愚かさが具現化されたからなのかもしれない。



力が抜けて、しがみ付くようにギターを抱えた。
抱えていくべきなのはギターだけじゃなくて、それより遥かに重い自分自身だ。
ギターより扱いが面倒で、誰よりも大事にしていかなければならない厄介な存在。
感情がぐるぐると回り続ける。
どうしたら昇華できるのかを考え続けている。
わかんねえよ、それでもさ。
俺は今でも願い続けている、誰かの耳に俺の音が届きますようにと。


=完結=

朱音 著