スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

ワタリ (作者:猫)

ワタリ 【2】

「さっき起きたでしょ??」
「うん、まあ」
「今日は私が住む予定のアパート、見に行くんだよね」
「おう。ヘルメットした??」
「したよ、心配性だなあ、翼は〜」
「じゃあ行くから捕まってね。」
「・・・はあーい」

ちょっと不満げな彼女の声が聞えて、可笑しくなって俺が笑うと
君も笑った。
その笑い声が風にかき消されて、原チャリが俺の家を後にする。
鍵についたキーホルダーがちゃりちゃり鳴って、
向かい風が体に沿って通り抜けて行く中
「もうすぐ高校生活もおわりなんだなあ・・・」
と彼女は淋しそうにつぶやいた
「お前、大学に行くんでしょ??」
「うん。だからアパート借りるんじゃん
 けっこういい部屋なんだよ」
「へえーそっかそっか。大変なんだなあー春花もさ」
「大変なのよ」
ため息混じりにつぶやいて、会話が途切れる。

彼女のアパートの近くは
人通りも車も多い、駅から近い都会だった。
さっきまでの穏やかな空気はどこへやら、人々は足早に歩いて
スーツ、制服、奇抜な服、地味な服、色んな服を着ている人が居た
俺は圧倒された。
彼女はこんな中でこれから住むんだから
「すごい、都会だねえ」
「でしょ??きっと洋服もたくさんあるよ、」
と彼女は得意げに笑っていた
強いなあ・・・そんな風に思って彼女のアパートを目指した。
その時、彼女とはぐれてしまった

猫 著