スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

ワタリ (作者:猫)

ワタリ 【1】

あんな風に羽で空を飛んで
黒い記憶の海を越えて君に会いに行くんだ



「今日、学校終わるのは12時頃だから
 終わったら翼の家に行くね」
春花からのメールだ。絵文字まで添えてある。

だけどメールをやっと見た今の時刻は12時半、もう学校は終わっている
学校からここまでどのくらいかかるんだろう。
よく思い出せないや・・・、学校には行ってないからな
俺は本当なら今高校3年生をやっているはずだけど
「諸事情」で学校には行っていない。
学校には行ってなくて、約束の時間も知らなかったとはいえ守れない男
こんな俺と、彼女は付き合ってくれている。

「参ったなあ・・・」まだパジャマの俺は頭をかいて
とりあえず着替えることにした。
ちょうど着替え終わった時、家のベルが鳴り
おふくろが出る
「春花ちゃんよー」
「はーい、じゃ行ってくるー」
鍵持った??、帰るときはメールちょうだい。といつもの玄関先の会話を
少し面倒くさく思いながら家を出る

彼女だ。
家を出た瞬間彼女は俺の原チャリにまたがって
俺の顔をじっと見てから「おはよう」とからかう様に言った
この人が俺の彼女、春花か。
君の顔に春になりきれていない季節の光がさして
とても明るく、柔らかく見えた。

猫 著