スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

群青 (作者:金魚)

群青 【7】

俺は次の日、仕事を休んだ。
それはそうとう度胸がいることで、

「若手にしては舐めた態度を取るやつ」

として取られるだろう。
でもそれでもかまわない。


俺は、急に海が見たくなった。
幼い頃から、海が好きだった。
海を見ると、なんだかやる気が出てくる。
頑張ろうと思えてくる。
親が死んだときも、海を見て元気を取り戻した。

最近全く海を見ていなかったから、
車に乗るとき、変にワクワクし、変に緊張した。


車を走らせて1時間弱が過ぎた。
海岸沿いに近くなり、やがて海が見えてきた。

近くの堤防で車を止め、浜辺を歩くことにした。


―ザザァー、ザザァー・・・
波が押しよせ、ぶつかり合い、しぶきを上げている。

やっぱり波の音はいいなぁ。
この音が一番落ち着く。
目を閉じて耳を澄ませば、
波が語りかけているかのように聞こえてくる。

ふと、ある人の名前を叫びたくなった。
俺が今、ここにいる理由。感謝すべき人。
愚かな俺を起き上がらせてくれた暖かい人。


俺は浜辺にこだまするように、サヤカの名前を叫んだ。

金魚 著