スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

群青 (作者:金魚)

群青 【4】

「えっ?」

彼女の言葉に俺は少し驚いた。
俺のいる世界では1年半と言っても若手で新入りも同然なのだ。

彼女はイタズラっぽい笑みを浮かべた。

「だって、ベテランさんだったら、私の言うことなんか黙って
聞くはずないもん。ベテランさんだったら、たぶん、私をどなりちらし
てるよ。でも君は黙ってるだけだもん。」

―なんだ、コイツは?

そして、彼女は続けた。

「それじゃぁさ、まだ大丈夫だよね?」
訳の分からない彼女に問いに

「は?」

と答えた。

彼女は急に真剣な顔つきになり、大きなため息をついて言った。
「きみ、バカだね。」

あまりにも意外なことを言い出し、俺はとても驚いた。
びっくりして彼女を見た。

彼女はたじろきもせず、

「だってそうじゃん。やりたくないんでしょ?この仕事。
なのになんでやってるの?抜けたいならぬければいいじゃない。
君は君の人生に恥な生き方をしてるのよ。君にもあったはずよ。
夢とか、誇りは。なのに忘れようとしてるの。怖いだけでしょ。
ほんとにバカね。」

俺は彼女の胸倉をつかみ、殴りかかった。
しかし、彼女は怯えもせず、まっすぐ俺を見て、

「あの頃の優しさを忘れてもいいの?」

と言った。

金魚 著