スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

魚 (作者:あつこ)

魚 【11】

僕の願いは叶わず背後から、遠くからバスの音がした
「…行くのね。やっぱり行っちゃうのね。」七海が僕の胸で言った
「ごめん、でも。俺、七海が…」


「そこから先は、言わなくても分かるよ」顔をあげて笑って言った
「七海…」
「待ってるから、私この海で待ってるから。だから戻ってきてね。お願い。約束して」

細い小指を伸ばして僕につきつける 僕も小指を出して絡めあう

「約束する。絶対に戻ってくる。」
「ほら、バス着たよ。行きなよ。」
「うん、うん。ありがとう。」
「じゃぁ、…『またね』。」
「うん、『また』ここで。」

そう言って僕はバス停へ向かい走った
仲間たちが冷やかしてきて恥ずかしかったけれど、そんなのは今さらどうでも良かった


『また、ここで会おう』
変わらない、変わること無い波のリズムが僕らを呼び合う 僕らは引き寄せられる
海のように、夏のように。

「きっと、まだ終わらないよ」
そう言った彼女の言葉をたよりに、僕は約束をした


またこの海で、
つくり話も、嘘でも良いから話して、抱き合って。
波の音を聞こう。新しく僕らのリズムを奏でよう。

また、この海で。



=完結=



■あとがき

好きな曲の一つなので、雰囲気を壊さぬように気持ちをこめて書き上げました
二人はこの後、離れてしまうけれどきっと気持ちは変わらないのだろうなぁ。など、
書いた自分でも二人の恋のこれから、をいろいろと考えてしまうのです。
「自分達は違う」と言う七海と「違うから惹かれあった」という自分。
恋愛って大変ですねぇ、でもお互いが優しい気持ちになれるのがやっぱり良いなあ。
…独り言デスね、すみません(笑)

舞台は「海」なので海のような穏やかで優しい恋の物語を書けるように頑張りました。
読んでくださった人はありがとうゴザイマス。
今後精進して行きたいデス。

あつこ 著