スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

ガーベラ (作者:ぽわん)

ガーベラ 第8話 【花音】

「あぁっ!?もう8時になっちゃうよ!!いいとこ悪いけど帰らなーい!?」
桜田がそう言うまで、僕は星じゃなくて花音の横顔しか見てなかった。


「花音、真っ暗だから、足元気をつけて。」

「うん・・・・大丈夫・・・・。」

「あたしの心配はなしぃぃぃ!!??」

「ねぇーよ。」

「ひっどぉい!!!!あたしだって女の子なんだからね!!」

いきなり桜田が右腕にしがみついてきた。

「おい、お前・・・・」

「未央っ。だめっ。」

次は左腕に花音がしがみついてきた。

「楓のっ、腕はっ、あ、あたしの・・・・っ」

顔がにやけて、抱きしめたい衝動に駆られる。危なかった。

「きゃは!!花音ってばぁ〜もぉ可愛いーーーーっっ!!!
じゃぁあたしは花音にしがみついちゃお!!!」


ドサッ!!!

そう言った瞬間、木の幹にひっかかった桜田が思いっきり転んだ。

「いっ・・・いったああぁぁい!!!」

「大丈夫!?未央っ!!」

慌てた花音が僕の腕から離れる。ちょっとさみしくなった。

「大丈夫かよ、桜田・・・・。うわっ!!」

「未央、すごい血だよ!!」

「痛いぃぃ・・・・・。足・・くじいたかも・・・」

半べそをかいている。本当に痛そうだった。

「あたし、戻って川の水くんでくる。このままじゃバイ菌はいっちゃう。」

花音が立ち上がった。

「危ないだろ!!僕も行く・・・・」

花音の細くてかよわそうな腕をつかんだ。

「楓は未央についててあげて。大丈夫だから。」

「でも・・・!」

「平気、平気。じゃあいってくるね!!」

僕の手から花音の腕がすっと離れた。

・・・・・・離れた。









花音は30分しても戻ってこなかった。



「ねぇ花音・・・戻ってこないよ・・・?」



1時間たった。



桜田を置いて、花音を探した。



無我夢中で走った。




花音、花音、花音・・・・・。

どこにいる 戻って来い 早く 花音 お願いだから

笑って さっきみたく 楓って 呼んで 笑って いやだよ 怖いよ

早く 早く 戻ってきて ねぇ 早く 好きだって ねぇ 早く

まだ 僕 花音に・・・・・・。





探して、探して、探して、探して、探した。





川の音だけが響き渡る。






「花音ーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」





花音の笑顔が頭をよこぎった。





あの時の 僕の声は 君にとどいていた?

ぽわん 著