スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

ガーベラ (作者:ぽわん)

ガーベラ 第2話 【出会い】

僕が心を決めたのは、あの日から7年たった今日だった。
僕らが出会ったのは、あの日から7か月前のことだった。
出会った時のことは、今でも覚えている。

中学の入学した時の、クラスの皆の前での自己紹介。
担任のデブった男の暑苦しい先生が言うには、

「これから1年間ともに学びあう大事な仲間たちだ!
自分の趣味や、夢。まぁ、嫌いな食べ物でもいい。
自分のことを早く覚えてもらえるように紹介するといいぞ!」

これから1年間同じ箱の中に閉じ込められるのだから、
名前なんていやでもすぐ覚えられるじゃないか。
それに、今から趣味だの嫌いな食べ物だの紹介したって、
この40人の話を記憶するやつがいるか?

目の前の髪を二つしばりにわけた女子が、席を立ち自己紹介を始めた。

「桜田未央です!趣味はピアノを弾くことっ、それにお菓子作り!中学ではいっぱい
お友達を作りたいです!よろしくおねがいします!!!」

こいつ、声でか・・・。
って、つぎは僕の番か・・・。
自分の席から立ち、ぶっきらぼうにこう言って、座った。

「僕の名前は、白川 楓(シラカワ カエデ)です。」

担任は「それだけか?」と言ったが、すぐ「それだけです。」とだけ答えた。
周りの生徒が、ちらちらと僕を見た。

どうせきっと、中学でだって友達はできない・・・・・・。
僕は小学生の頃から、男子が騒ぐようなカードゲームや、コンピュータゲーム、おもちゃに
全くついていけず、いつも一人でいた。
いまさら、友達がほしいとも思わなかった。中途半端によってこられて、僕といてもつまらないと
わかったら離れられる。
そんなことをされる前に、人をよせつけないのが第一だと思った。
・・・・・・いつの間に自己紹介は、最後の40人目の子まで進んでいた。


「あたしの名前は、夢川 花音(ユメカワ カノン)です。」


「それだけか?」

「それだけです。」

同じ・・・・・?

僕は後ろをふりかえった。
窓側の一番後ろに座った、ストレートで真っ黒の長い髪の小柄な女の子は
日の光に照らされ、その子自身が眩しく輝いてるように見えた。
その子は、僕と目が合うとニコッとほほ笑んだ。


これが僕らの出会いだった。

ぽわん 著