スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

スノードロップ (作者:香夜)

スノードロップ 【7】

「・・・もう平気か?」

あたしはその問いに小さく頷いて、答えた。

「じゃ、行くか」

そう言って、圭汰はあたしから手を離し、
学校の方へと少しずつ歩き始めた。

あたしはその、後ろ姿を黙って見つめていた

今まで、胸にしまっていた
感情がいっきに溢れてくる気がした―


「おーい 明日香!?」

彼は、立ち止まっているあたしを呼んだ。


今なら  伝えられる気がした

どんどんと

とめどなく 溢れる

この気持ちを・・・



「明日香?」

彼はあたしの方へと歩み寄る。

「どした? 気分でも悪いのか?」

心配そうな瞳で、あたしを見ている。


あたしは 今しかないと思った


「・・・あのね、あたしも言いたいことがあるんだ・・・」

「ん?何?」

「あ、あたしね・・・」

「ん?」


「け・・・圭汰が・・・」


「ん?」



「・・・好きっ・・・!!」




他に何も考えられないくらい
いっぱい いっぱい
だった・・・





すると、圭汰はあたしの頭の上に
ポン、と手を置いた。
そして口を開く。



「・・・うん、俺も好きだよ・・・
 幼なじみだもんな・・・」



思いもしない返事だった・・・


あたしは“ただの幼なじみ”・・・

それ以上でも以下でもない


・・・まだ、甘かったのかもしれない


あたしは初めて“幼なじみ”という言葉を重く感じた―



「じゃあ、行くか」

彼は、また一歩一歩・・・確実に足を踏み出す。


「・・・ん。」


あたしは彼の鈍感さに、泣かされそうになった


でも、こらえた

必死にこらえた







鈍感で、でも愛しくて愛しくて仕方がない
   君への 涙を・・・

香夜 著