スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

スノードロップ (作者:香夜)

スノードロップ 【1】

「・・・おい、聞いてっか?」
圭汰がトナリにいるあたしの顔を覗き込む。
「はへっ!?」
ボーっとしていたあたしは我に返った。

それは委員会中の出来事だった。
話し合いの内容は黒板の書かれていたが、ボーっとしていたあたしには
何のことか さっぱり分からなかった。

「えっ、何!?」
あたしはとっさに圭汰に訊ねた。
「校内の清掃についてだよ。 お前、ずっと目ぇ開けて寝てたろ。」
「ち・・・っ、違うよ!!考え事してただけなんだからね!!」
あたしは急いで否定した。
すると、彼は「ホントか?」と笑いながら言った。


あたし 桜木 明日香(さくらぎ あすか)は
幼なじみの 井原 圭汰(いはら けいた)の
笑顔に弱い。
昔から、ずっと。
大好物のプリンを盗み食いされても、彼の笑顔ひとつですぐ許してしま
う。
そのくらい弱いのだ。

持ち前の明るい性格も大好きだ。
いつも周りを巻き込んで、笑っている。
そんな君とずっと一緒に居られたら―・・・
たぶん これ以上に幸せなことなんてないんだろうなぁと思う。


「・・・おーい!明日香ッ!! 委員会終わったぞー!!
 いつまで目ぇ開けて、爆睡してんだぁー!」
またボーとしているところに圭汰があたしを呼ぶ。
「もーっ!!違うって言ってんぢゃん!!」
「ハイハイ。分かってるって! 帰るぞ」
あたしは圭汰にそう言われ、鞄を持ち、廊下で待っている圭汰のトナリ
についた。




圭汰のトナリは あたしの特等席だ。
これは 幼なじみのあたしだけに与えられた 
   特権だと思う。


圭汰は結構女子に人気があって、中学入学時から何人も振っている程。
だからいつもトナリにいる幼なじみのあたしは
その女子のみなさまに妬まれてたり・・・
一時期、自分の靴箱の大量の納豆が入れられてたなぁ。
今だから笑える話^^


でもあたしはそんなイタズラをされても めげずに
圭汰のトナリに居続けた。

すると女子軍も諦めたのか、イタズラは止まった。

当時は圭汰もすごく心配そうだったのが、イタズラ止まった途端
ホッとしていた。
あたしもとりあえず、特等席を守れたので良かった。



その時 初めて 心の底から 「勝った!!」と
      思えたんだ―・・・

香夜 著