スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

砂漠の花 (作者:P)

砂漠の花 【7】

「えっと・・・じゃあ話しますね。」
「あ、お願いします。」
「その前に、敬語止めません?」
「え?」
「なんか、あれですし。私は神崎。神崎恵理香です。」
「あ・・・・・多田功介です・・・・。」
「功介さんって呼ばせてもらっていい・・・・かな?」
「あ、はい。お願いします・・・」
「敬語はいいよ。(笑)私のことは恵理香で。」
「ええ!?」
女を呼び捨てにするなんて、小学校のときからしていない。
勇気がなかったのだ。
「あ、・・・すいません・・・初対面だもんね・・・・。」
「あ・・・じゃあ・・・恵理香さんでもいいですか・・・・?」
「あ、おねがいします!!」
女は笑った。
この、透き通るような目だけが、悲しそうに・・・
言葉にできない。
「えっと・・・話してもいい?」
「あ、はい、お願いします。」
「えっとですねぇ・・・。何から話せばいいんだろう?」
「どうぞ。」
恵理香さんは、ちょっと間を置いてから話し始めた。
「私の父は、どろぼうなんです。プロの。(笑)」
「え・・・・?」
「まぁ、落ちこぼれていて、アルコール中毒で、女ったらしで・・・。就職もできませんでした。」
「はぁ・・・。」
「しかも、その女ったらしのせいで、私が産まれたんです。だから、私は、結婚もしてない男と女の間に産まれたってところです。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「そして最近、父が捕まりました。」
「だから・・・・・」
神崎という苗字に、聞き覚えがあったのだ。
この近くに、それの娘が住んでいると、噂をしていた人がいた。
「でもやっぱり、私は憎めないんです。父のこと。あ、すいません・・敬語になってた・・・。」
「あ、いえ。」
「それに、父が捕まったときは、ちちはなんにも盗ってなかったんです。というか、プロの泥棒って言っても、お金持ちから何か盗んで、それをホームレスの方達にあげてました。最近まで一緒に住んでたので、わかるんです。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「だから、私は、泥棒に入ったって、何にも盗ってない人や、お金をもてあましている人から盗るんだったら・・・・まぁ、すこしは許されると思います。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
―――こんな人も、世の中にいるんだなぁ・・・・。
ずっと、一人だと思ってた。
わかってくれる人なんていないから。
そう思ってた。
だけど、今は違う。
そう知れたから。
だから・・・・

P 著