スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

砂漠の花 (作者:P)

砂漠の花 【2】

3年前、俺は泥棒をした。
就職していた会社でクビにされ、行き場を失い、金も失った。
泥棒に入った家は、普通の一軒家。
誰もいないと確認して、ガラスを割って・・・。
あっちこっち探しても、へそくりなんて隠れていなかった。
やっと1000円を見つけたとき、その家の人が帰ってきて、俺は捕まった。
そして3年間、じっと待った。
ニュースになって顔を知られているのかもわからない。
母さんに会いに行って、殴られるかもしれない。
姉弟だって、口を聞いてくれるかどうか、危ういような気もする。
金は一円も無くなった。
家はなんとかあったが、もうツルが巻きついていて、これが家かと思えるほどだっ
た。
―――一応、母さんのところに行くしかないか・・・。
母さんの家は、田舎のほうにある。
昔の家みたいな家ではないんだけど。

♪ピーンポーン
「母さん、俺、功だよ、功介だよ。」
「・・・・・・・・・・・・」
返事が帰ってこない。
「母さん?」
中に入った。
母さんはいなかった。
「どこ行っちまったんだよ・・・。」
そこから姉貴に電話した。
『もしもし』
「あ、姉貴?功介だけど・・・。」
『あ、釈放されたんだ。』
「うん。いま家にいんだけど、母さんがいなくってさ。買い物とかだったら姉貴に電話してんだろ?なんか知らない?」
『お母さんなら、2年前に死んだ。』
「・・・・・・え?」
『そっか、あんたには知らされてないんだね。もうお葬式もやったよ。姉ちゃん家きなよ。お墓つれてったげるから。』
「今から行く。」
―――俺のだけ、母さんの死目に会えなかったのか・・・。
そんな気がした。

P 著