スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

リコリス (作者:ユリコ)

リコリス 第1章 『扉開かれたり』

「リコリスが消滅した…」


一人の男がそう言った。
男の周りにいた人々の顔が青ざめた。

「ついにこの時が来てしまったのだ。
 我々に残された時間はあとわずかだ…」

男がため息をついた。

「もう後には戻れぬ。異世界からの使者を待つしかない」

「ということは…長老……まさか…」

「あぁ…そうだ」



長老と呼ばれた男はそっと口に出した。



「『破滅』と『誕生』の戦士が目覚めるときが来たのだ」








――――――春。


公園には桜の花で美しく彩っていた。
新しいランドセルを背負った子供たちが歩道を走っていった…。
それを物静かに見つめる一人の青年がいた。


彼の名は誠也。ごく普通の大学生。

今日は大学の都合でお休み。
ということで気分転換に公園を散歩していたのだ。

誠也は桜の花が好きだ。
4月生まれと言うこともあり、見ているだけでも心を癒されるらしい。

この公園には大きな桜の木が1本だけ生えている。
幹もとても太く、樹齢を聞きたくなるほどの立派な桜だ。
誠也は小さいときからこの桜の木と一緒に過ごしたといっても過言ではない。
誠也にとっては兄弟のような存在だ。

しかし…


「今年はなんだか…違うんだよなぁ…」


誠也は今の桜の木に何か違和感を感じていたらしい。


「なんかもう…咲くことができるのは
 今年で最後な気がするのはなんでだろうな…」





すると、誠也の目にとても眩い光が入ってきた。


「!?」


『この世界はつながった…扉、開かれたり』


「え!?」


『まもなくこの世界も【沈黙】に支配される』


「はい!?」


『どうか…あなたを力を貸してください―――――








『リコリス』を………。――――世界を…』








誠也は光に包まれた。





数分後…、
誠也が静かに目を開けるとそこはいつもの公園ではなく…

どこかもわからない、みたこともない…

深い森の中だった…。

ユリコ 著