スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

ハニーハニー (作者:P)

ハニーハニー 【3】

わたしの名前は江藤 天。
読み方はえとう そら。
『天』を『そら』とよむような当て字なんて、どこでおぼえたんだか・・・。
そして、不安だらけの中学一年生。
兄姉がいないため、この学校の吹奏楽部のことは何一つ知らずに、「音楽が好き!」という理由だけで入ってしまった。
この、「音楽が好き!」というのは、歌手のスピッツの影響である。スピッツを聞いていて、音楽の魅力に惹かれていった・・・というところだ。
でも、このころは忙しすぎて、大好きなスピッツの曲すら聞く暇もなかった。

あの日のこと、思い出すだけで吐き気がする。
そんな状態だ。
少しは光があったのに、あの日のあの瞬間で、バッと何も見えなくなった。
お母さんに車に乗せられたとき、なぜか悪寒がはしったのは、身体が、わたしはそうなることを予知していたんじゃないかと、今でも思ったりする。

あの日


泣き喚いてそのまま布団にもぐりこんでさえいたら


服を着替えさせようとするお母さんを蹴っ飛ばしてでも家にいさえすれば


車に乗りさえしなければ


学校もろとも消えてさえいてくれれば


きもち悪いなんて、うったえさえしなければ


あの人達が、わたしのことを聞き出そうとしなければ


こんなにつらくなくて


すんだかもしれないのに

P 著