スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

さくらんぼ探偵事務所 (作者:りょぅ仔)

さくらんぼ探偵事務所 【第6話】

「・・・あたくしって、どこに泊まればいいんですの?」


話題をきりだしたのは、菜々子だった。

居候することに成功しても、寝るところが埃まみれの床の上だったら死んだ方がましだ。

というオーラを出しまくっている。


その言葉を聞いて、田村が菜々子に紙を渡した。


「その紙は、この洋館の間取り図だから。
 結構広くてね、初めての人は迷うかもしれないし。」


間取り図に目を落とす。

洋館は二階建てが二棟。

なんで四人で住むのにこんなに広いのかという程広い。

主な活動場所は今菜々子達がいる玄関ホールで、そこから伸びる廊下が2本。

玄関ホールに備え付けられた大きなデスクと、来客用のテーブル。

晩ごはんなど食べる時は、来客用のテーブルを使うという意味の成り立たない仕組みだ。

三輪曰く、
お客さん来ないんだもん。
らしい。

玄関ホールもなかなか広くて余裕に20畳はありそうだ。

玄関から見て左の廊下が、重要な資料や、生活費を管理する部屋と台所。

玄関からみて右側の廊下が、メンバーの部屋になっている。

部屋では、ほとんど寝るだけらしい。

部屋は廊下の左右に分かれている。

廊下を歩いて一番手前の右側が田村。

手前の左が草野。

草野の隣が三輪。

田村の隣の部屋に"崎山"と書かれていた。

・・・・誰?



だが、それより先に、菜々子は広い洋館の紙の至る所に赤い印が付いていることに気付いた。


「この印はなんですの?」


「あぁ、そこは踏んだら壊れるところ」


「・・・え」


あっさりと答える田村。

聞けば、この印の場所は、この洋館つまり事務所関係者はみんな覚えているらしい。


「修理しないんですの?」



という菜々子の質問に、大きな柱時計を一回見てから草野が答える。



「大きな収入が入った時に修理するんだ。
 この間のお客で結構お金が入ってさ、今は木材買いに崎ちゃんが出かけてる。」

「崎ちゃん?」


聞いたことのない名前に、首をかしげる菜々子。
菜々子は田村に"崎ちゃん"について訊いた。

"崎ちゃん"とは、田村の隣の部屋の"崎山"という人物らしい。


「崎ちゃんは修理とか、修理の材料の買出しの係り。
 今頃たぶんハンズ●ンだと思う。」


菜々子は、ふぅん、と返事をしてクモの巣を珍しそうに眺める。

住むのはどうやら、四人ではなく五人らしい。

大きな柱時計の大きな振り子が、乱れることなく一定の時を刻む。




菜々子の部屋は、その"崎ちゃん"の部屋の隣だそうだ。

一人一人の部屋の広さはどこも、十二畳でベッドも付いているという。

人が一人寝るのに全く困らない広さである。


菜々子が、この洋館に一歩踏み入れた時(連れ込まれた時)から気になっていたこと。









「この事務所、お化けとか出ませんわよね?」









その質問に、一同口をつぐんだ。




「・・・・うそーん」


沈黙の中、菜々子の声だけが妙に大きく聞こえた。

りょぅ仔 著