スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

さくらんぼ探偵事務所 (作者:りょぅ仔)

さくらんぼ探偵事務所 【第3話】

「・・・・ここが事務所ですって!?」



古い洋館の大きな門の前で、菜々子は叫ぶ。

そんな菜々子の隣で、男はボーっとっ立っている。


「・・・・そうだけど」


「そ、そうだけど・・・って
 考えられないわ!
 こんなボロい所があたしの探していた事務所ですって!?」


菜々子に詰め寄られて男は後ずさりしながら、額の汗を手で拭う。


「だって、地図通りなんで・・・・」


「だってもなんもあるの!?
 もうっ、いいわ!
 帰る!!!」



菜々子の”帰る”の一言に、男は慌てる。


「ややややや!
 ちょーちょーちょー!
 待ってよ、ホント!」


「なんですの!?
 ・・・ちょ・・・帰るんですから!
 帰るったら帰るったら帰るんですのーーー!!!」


「お願いだからー!
 最近俺ら、もう・・・・
 モヤシしか喰ってねぇーの!
 んで、今日やっとお金ちょっと貯まってカップラーメン許可がでたばっかなの!

 もうモヤシ喰いたくねぇよぉ!!」


「モヤシ!?
 それだけですか!?」


男の不憫さに、少しうろたえた菜々子は

男に近付いた・・・・・



その時



菜々子の体が、宙に浮いた


その瞬間













「・・・っしゃぁぁぁぁーーーーー!!!!
 客ゲーッツ!!」














男は菜々子を肩に担ぎ、洋館の中へまっしぐら。










「ひぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!
 た〜す〜け〜てえ〜〜〜ぇ〜ぇ」










菜々子の叫びは、人通りの少ない裏通りに



消えた。

りょぅ仔 著