スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

会いにゆくよ (作者:ぽわん)

会いにゆくよ【3】

朝、とりあえず君にメールをして僕の一日が始まる。
『おはよう!
今日そっち、マイナス18度だって。天気予報見たよ。
女子ってみんな素足で短いスカート履いてるけどさ、あんまり
寒いかっこしたら風邪ひいちゃうからさ、気をつけてね。』

こんなメールをしたところで君の返信内容はわかってるんだけど、
どうしても言わないと気がすまない。
そしてたった2分で君から返事が来る。

『まだ私寝てたんだけど(怒)
毎日毎日余計なおせっかいありがとう、おやすみ』

もう7時過ぎてるのに・・・。遅刻しないでよ、
と返信しようとしたけどやめておく。


「じゃあ仕事行ってくるわねー!」
母さんの声だ。いそいで台所へ行き弁当箱をひっつかんで玄関へ行く。
「母さん、弁当せっかく作ったんだから、忘れないでよ」
「あらごめんごめん。いつもありがと。じゃあね!」

僕が料理も家事も裁縫もできるのはこの家庭のおかげと言ってもいい。
僕と母は二人きりでこのせまい家に住んでいる。僕が幼いころに父は
もう亡くなってしまって、それから母ひとりで僕を育ててきてくれた。
女ひとりで働く母を助けようと、料理や家事をするようになった。

母を見送り、父の写真にいってきますを言い、君からのメールがきてないか
一度確認して(たいていはきていない)、僕も家から出る。

ぽわん 著