スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

Y (作者:優)

Y 【3】

俺と美奈が出会ったのは俺たちが高校三年生のときだった。

俺たちは初めから仲が良かったわけではない。
美奈は俺の訳もなく騒ぐところが嫌いだと言っていたし、俺は美奈の強気な態度が気にくわなかった。
「あんた、何でそんなにうるさいの」
「楽しい時に笑っちゃ悪いか!」
「無駄に笑顔振りまかれても…うっとおしい」
こんな口喧嘩を毎日のようにしていた。
時々俺が美奈を泣かしてしまうこともあったが、それでも美奈は俺につっかかってきていた。
強い女だな、とそのときは思っていた。



山岡から美奈が病院に運ばれたという知らせを聞いたのは夏休み後半のことだった。
デパートで買い物をしている最中に、急に胸を押さえて倒れたらしい。

「う、そ…だろ?この間見かけたときはぴんぴんしてたぞ…」

「嘘じゃねぇよ、崇史!」

山岡の顔は青ざめていた。

「もともと心臓に病気持ってたらしいんだ。夏休みの間ずっと入院かもって…」

茫然とする俺の肩を掴み、山岡は何度も「見舞いに行けよ」と言っていたが俺はその手を払いのけた。
無理やり作った笑顔を山岡に向け

「美奈はそんな弱くねぇよ。学校始まったらひょっこり顔だすだろ。
わざわざ俺が行かなくても平気だよ」

と言った。山岡はまだ不満があったようだがそれを無視して、「じゃ、また新学期にな」山岡に別れを告げた。

しかし、俺の期待はあっさりと裏切られた。
美奈は新学期になっても退院しなかった。九月が終わりに近づいても美奈が学校にくる気配は無かった。

「いい加減、見舞いに行けよ」

ある放課後山岡が俺に強い口調で言った。

「あいつも…美奈も、お前に会いたがってる」

優 著