スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

群青 (作者:三日月 遥)

群青 【第1章】

「はぁっ…はぁっ…。」
高鳴るリズム、顔も真っ赤。

もうやめてくれよなぁっ!
そろそろ息も苦しくなってきた。
そりゃそうだ。
俺は20分近く走り続けてるんだぞ!!
でもそんなこともお構いなしに奴が追ってくる。


要に「ちょっと来てくれる?」と言われたのは30分前。
何かと思えば「いい加減にしてよ!!いつになったら思い出すの?」
と言って怒り出す。
だから走るしかない。
しんどい…。


こうなったら最後の手段をとるしかない。
少し距離を置くために全力で走った。
角を曲がる。角は2つある。どちらに行ったかなんて奴らはにはわからんだろう。
その隙に俺は思いっきり池に飛び込んだ。
奴らは気づかんかった。
奴らの目を見計らって俺は顔を出した。
「…ぶはっ…。し…死ぬかと思ったわ…。あいつら…。」


さすが秋の終わり、だんだんと寒くなってきとる。

よいしょ、と池の縁に手をかけてゆっくりと水からあがった。
ああ寒い。

でもあいにく上着もなんも持ってきとらん。
このまま戻るしかないかないか。

まだ授業があるって事、すっかり忘れとった。


教室に入ると俺はやっぱり笑われた。


「千秋ーっ!お前また要たちに追っかけられとったなぁー」
「…しーぬかと思ったわ。」

要は強い。女のくせに俺より強い。
幼なじみで要とはいい仲なんだが毎日のように喧嘩が絶えない。
そのおかげでこの有様だ。
しかもグループで追っかけてくるから余計に大変だ。
どうにかなんないのかなぁ。

でも、俺は要が好きだけん、「来て」って言われたら逆らえない。

三日月 遥 著