スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

青 い 車 (作者:白炎)

青 い 車 【9】

僕は、純粋な気持ちで手帳をめくった。
彼女の誕生日を知れる。
その喜びは、きっと普通の人には理解知れないのだろうけど、僕は嬉しかった。
彼女が僕によって、誕生日と言うものを”好き”になるかもしれない。そう考えたから。

隣りに居る彼女が少し、呻き声をだした。
吃驚して手帳を閉じてしまった。
月が正確に書いてない手書きの手帳は、さっきまで何処を開いていたのか解らなくなった。
彼女の秘密に迫っていたのに・・低くなる気分が僕を憂鬱にする。
仕方ないので、適当に頁を開いてみた。
すると変わらない数字が並ぶ、白い予定の中に「私の最後の日」そう書いてあった。
僕は、声が出なかった。
正確には、何も言えなくなった。


驚きよりも、恐怖が僕を包んだ。
彼女が、僕の愛しい恋人が死ぬ。
そんな状態に誰が正常で居られるだろうか。

最後の日と言う直喩的な表現は何を示しているのだろうか。
彼女は病気なのか。
自殺をする気なのか。
何故、自分の死ぬ日など考えるのか。


頭の中が真っ白になりかけた時、答えが出た。

そう、その日は彼女の誕生日なのだ、と。

白炎 著