スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

青 い 車 (作者:白炎)

青 い 車 【8】

結論から言うと、僕は彼女の手帳を見たことになる。
好きだから、気になった。
それより、君の隠し持つ秘密が知りたかった。という好奇心の方が強かった。

君が死んだ今、僕が一番後悔してるのが君の手帳を見たことなのかも知れない。
君を殺したことを後悔しないのは・・今でも君を愛してるから。

僕が君の手帳を見れたのは、君が眠りについた薄暗い夜だった。

その日はいつものように、僕は君の傍で過ごして白昼から抱き合い、疲れ果て眠りについた。
僕が仕事で家を出る時意外は、ずっと彼女と居る。
時に、質問をし、それに答え。
無言のまま見つめあい、僕らは終わりない夢へと溶け込むように落ちていく。
そんな日々とまるで変わらなかったのに、君は僕より先に眠りについた。

君の美しい寝顔に、キスを落とし僕は彼女の鞄から手帳をだした。
罪悪感に見舞われながらも、僕の中の好奇心がそれを正当化した。
何の変哲もないその手帳を開くと、中には特に目立ったことが書いてある訳でもなく正直、期待はずれだった。
白に近い月日を目で追って、頁をめくる。

日付には、たまに記号のようなものが書いてあり”今”に近づいてくるほど多くなった。
どうやら、僕と会った日にチェックをつけているようだ。
僕の誕生日の月をめくっても、何が書いてあるわけでもなく、少しがっかりした。
そして、しょうがないと思った。
彼女は、誕生日と言うものを恐れてる。一年でもっとも年を取ったと思う日だから――――――――らしい。

ふと、僕は彼女の誕生日が知りたくなった。
彼女が誕生日を好きになるには、きっかけが必要なのだと考えた。
そう、彼女の誕生日を祝おうとその時、思いついたのだ。

馬鹿げた、愚かな思想を僕は抱いてしまった。

白炎 著