スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

めざめ (作者:あつこ)

めざめ 【37】

何時間たったんだろうか、しばらくするとサオリさんは口を開いた
「ねぇ、今日一日何した?」
「え?何をいきなり」
「いいじゃん、ほら、今日何したの?」せかすようにサオリさんが聞いてくる。
俺は何がなんだか分からずに答える「テレビ見て、部屋片付けて、それで――・・・昔のアルバム、見てた」
「ふぅん、あたしと、大差無いね」「そう?サオリさんも、かぁ」

サオリさんは、俺を見て少しだけ笑った 風が優しく俺たちを包んだ 冬の寒さを告げているようだった

「「ねぇ」」声が重なる あっ―・・・と顔を見合わせてまた、少し笑った
お互い少しだけ笑いあっただけで、何も言わないで地面をただ見下ろした

「夜明けまで、どんぐらいだろうね」
「分からない、でも―・・・」サオリさんが腕時計を出して、ジッと見つめた

「まだまだ、って感じ。」
「まだまだ?」
「まだまだ、あ、でも。もうひと頑張りぐらい、かな。」
「もうひと頑張りかぁ」


死ぬってことは、息が止まるだけではないってのは遠く前から知っていた
自ら命を絶つってのは少なくとも―・・・良いことでは無いってのも知っている
それでも、それでも、たとえそれがいけないことだって 分かっていても
この人が望むのなら、この俺を選んだのなら、俺は真剣になって、叶えてあげようと思ったんだ。

朝が来たら俺はここには居ない。
サオリさんも、この世界から消えてしまう。

いやだよ、だめだよ、そんなこと。サオリさん―――!
祈るように願うように、そんなことを考えていたらサオリさんが口を開いた
「翔太、もう、良いんだよ」

あつこ 著