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めざめ by あつこめざめ 【33】目がはれていた 赤くなっていて自分の愚かさに笑が込み上げてきた 人生最後の朝食はトーストと目玉焼きといった虚しいものだった。 私はそれらをキレイに食べ、ごちそうさまの合図と共にリビングを出た 人生最後の土曜日、今日の夜に私は――――・・・とまだ青空に白く残る月に祈った 知っている、私は知っている。翔太の気持ちも私の気持ちも、そして今日の月の形も、みんな。 することは何も見つからなかった なんて寂しい最期。でもそれもいいかもね。 日が落ちるまで私は部屋中の本やら日記やら手帳やプリクラを貼ったノートまで全部を読んで一つずつ噛みしめた。 そして手紙を書いた 一つは父と母と妹に。一つは青森に住むおばあちゃんたちに。 そして最後の一つは――――秘密。誰にも言わない、これだけは内緒。 宛先と切手を貼り、丁寧に気持ちをこめて書いた 遺書っていったら大げさなもので私は父と母と妹へひたすら感謝を書き記し おばあちゃんたちには何度も何度も『大好き』と――― そして最後の一つには、優しく自分の素直な気持ちを書いた。 最後の一つが出来上がった時、私は最後の手紙に小さなキスをして机の引き出しに入れた 手紙を書き終る頃には日はすっかり落ちていて寒い風の音だけが耳に入ってきた 私は翔太に会うための身支度を、一番自分のお気に入りのブラウスにフレアーのスカートを履いて時が来るのを待ち続けた 部屋はこれ以上無いってくらいにキレイに片付けた 何度も何度も台所の冷蔵庫を開け、意味も無く何かを探している真似をして心を落ち着かせた 『最後の晩餐』はご飯と鮭のムニエルだった そういえば、ダヴィンチの最後の晩餐でも白身魚を食べていたとテレビで見たことがある そんな些細なことが面白く感じられ、私は妹と家族達の会話に耳を澄ませながらも何も言わず、箸を動かし続けた。不思議と笑みが零れてきた。 最後の晩餐―――をすませ、私は上着を着てぼうっと部屋で周りを見渡し、昔のことを思い出した 「・・・・・・もう9時・・・・。そろそろ、行かなきゃ。」部屋に寂しい声だけがこだました 立ち上がり、玄関へ向かいドアノブに手をかけた 「待ちなさい、沙織。」 あつこ 著
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