スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

めざめ (作者:あつこ)

めざめ【13】

それから、それから俺たちは小さな、どうでもいいようなことを延々と話し合っていた
好みの音楽、本に漫画。他にも、他人から見ればくだらない、って言って笑われそうな。

そんな小さなこと、それが楽しくて嬉しくて。
彼女に溶けていくような心地がした

サオリさんは軽く笑ったり、頷いたり、ツンとした素振りをしておどけて見せたり。
普通の中学生のような感じでその一面も、なんだか好きで・・・。

でも、言ってはいけないんだと思う。
やっとこんなして出会えたのに、ここで俺が好き、なんて言ったら全てが終わる気がした。

そうだ、言うのなら―――、
彼女のさっきの誘いをフッと思い出した。


一緒にさ、死のうよ


言われた時は驚いたけど、でも彼女が死、を共にする相手として俺を選んでくれた、と思うと
なぜか嬉しかった。

そうだ、死ぬ前に。手を繋ぎながら彼女に伝えよう。
好きだ、って言ってみよう。
それで十分だ、そうすれば今は壊れることなく、彼女と一緒に居ることが出来る。
馬鹿みたいだって言われそうだけど、笑われそうだけどその時の俺にはそれだけで十分だった。

サオリさんが好きだから、一緒に居たい。
だから、気持ちは伝えない。

単純なことだけどそれは重要で、大きなことだ。
サオリさんも話している間中、ずっと笑ってくれてそれがただ、・・・嬉しくて。

一生、こうしていたい。なんて感じた。
神様が居るとしたら、きっと僕らを見てしかめ面をするだろう

神様、ごめんなさい。でも、好きなんです。
ああ、神様。なぜ―?
何でこんなふうに俺たちは出会ってしまったんだろう?

目の前には漠然とした死があって、それを愛する人と乗り越えることは幼い彼にとっては脅威だった。 
胸が痛い。   でも、会わなきゃ良かったなんて思えないんだ。
こんなにも苦しいのに、未だに出会えたことに感謝する自分が情けなかった。

あつこ 著