スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

めざめ (作者:あつこ)

めざめ【11】

「翔太のこと、知れて嬉しい」とサオリさんは少しだけ笑った
俺もだらしなく笑って、一緒に遥かな地面を見続けた


「翔太―・・・一緒にさ、死のうよ。」
サオリさんは突然脈略も無く言った。俺はビックリしたけれど
サオリさんと一緒なら、死すら怖くないと思えた。

「良いよ」

口から自然に返事が出てきた
サオリさんとなら死ぬのなんて怖くない。
「私、飛び降りるのだったら朝陽を見ながらが良いかなあ。
一緒にさ、夜にずっとここで空を眺めていてさぁ、
朝陽が昇るのを見ながら飛び降りるの。  
かなり素敵じゃない?」

サオリさんは楽しげに「死」を提案する。
「翔太は?どうやって死にたい?」
・・・・え?としか言いようが無かった、そんなこと生まれてから一度も考えたこと無かったのだから
でも・・・サオリさんと手を繋ぎながらこの空を飛びたい、なんてぼうっと考えた
それと、夜中一緒にずっとおしゃべりして、歌を唄ったりしたい。なんて子供っぽいことを考えたいた


「なんでもいい、サオリさんと一緒なら」

小さく、彼女に聞こえないように俺は言ってみた。
そうしてちょっと横目で彼女を見ると、頬を赤く染めているサオリさんの姿があった

「私も・・・翔太と一緒なら、なんでもいいよ。」

俺はその消えるようにか細い一言に一瞬胸をドキッとさせて、彼女の横へと一歩近づいた
それで、手を重ねた。

あたたかい、体温と体温が重なる。
胸の鼓動が早まる、聞こえたらどうしよう――恥ずかしいな。

重ねた手からは彼女の体温が熱く、伝わってきた。
それすら嬉しくて、嬉しくてだけど少し切なくなって。


「死ぬ時はさぁ、一緒だよ?絶対に」


彼女の言葉に俺はうん、とうなずいて、また遥か遠い、地上を見つめた。

小さな灯が一瞬目の前を横切ったような、そんな気がした

あつこ 著