スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

めざめ (作者:あつこ)

めざめ【9】

甘い香りは、下の街路樹からのものだった、
「あ、――――金木犀。」
「きんもくせい?」
「知らないの?この香りの花の名前だよ?金木犀。」
「知らなかった、きんもくせい、かぁ。」

翔太が、「私をもっと知りたい」と祈るように言ったのが聞こえた
私も、もっと知って欲しいし彼自身をもっと知りたい。
でも、知るとどんどん深みにはまっていきそうで、怖い
ただでさえ、彼に溺れてしまいそうになるというのに。これ以上好きになったらたぶん、私は崩壊する

―――壊れても良い、死ぬ覚悟で彼と接していこう、
最後にはそんな無駄に強い想いが私に残った

金木犀の、秋を告げる香りが風に乗って私たちを包む
初めてした恋のように甘くて、切なくって、
でも、素晴らしいほどに世界が愛しく思える香り。
それに伴って儚くって、辛くって、・・・・恋しくって。好きで、好きで、好きで。大好きで
一瞬にして恋に落ちるような感覚、
忘れたくない何か、を思い出させるような忘れてしまいたい何か、すら思い出すような

「私のこと、もっと知って。もっといろいろ感じて、伝えて。」
そこから私は全てを話した

家族のことから、学校のこと、塾での関係。全部

少しでも彼に、何か伝われば良いな、と思って一つ一つ、涙を流したりしながら話した

伝わって欲しい、私の気持ちも、考えも、命の鼓動までも。全部みんなみんな伝わって欲しい。

私は、中学2年生 吹奏楽部 病弱の妹が居て母は付っきりで義理の父が居る。
友達関係は親友が2人。ミノリと彩。ミノリとは同じクラスで同じ部活の仲間。
ミノリには好きな人が居る。同じクラスの、酒巻くん。
そして酒巻くんは私が好き。

友情なんて一瞬で壊れる。
女になんて生まれなければ良かった。
男子みたいに、馬鹿みたいなことでずうっと笑いあえる関係が羨ましいって本気で想う

女なんて、なんでこんなに面倒なのだろう。
ちょっとしたことですぐに重ねた日々は、砂の城のように壊される

友達も、先生も、親までも。一瞬で悪魔になる

あつこ 著