スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

めざめ (作者:あつこ)

めざめ【7】

私は自分の頬をすうっと、触れてみた。
冷たくって熱い、雫がボロボロと零れているのに気づいて
私はなんだか思い知らされたようで、嫌になった

「あ、れ…?なんだろ、おかしいな。何で涙が出てくるんだろう?」
そう言い放つと目の前のまだあどけない顔をした少年――翔太は、驚きもせずに私の涙をジッと見ていた

頬を、目を涙を掌で受け止めて、隠そうと拭った
「嫌だ…止まらない。変なの、――嫌だな。」
私は誤魔化すように、茶化すようにしておどけてそう言っても目の前の彼には通じなかった

「泣いて、良いんだよ?泣きたいんだったら。」優しく翔太が言う

―――やめてよ、優しくしないでよ。期待しちゃうでしょ、どうせあんたも裏切るんでしょ?

俺は、裏切らないよ

―――それ・・・・本当?

本当だよ

――――泣いても、良いの?笑ったりしない?

しないよ、絶対に。

翔太と少しだけ言葉を交わしたら、涙が馬鹿みたいに出てきた。止まらない
今までこれだけ我慢してきたんだ。

涙が出てくると同時に私は、少しずつゆっくりと恋に落ちていった

こんな恋の戸惑いも、心配も、喜びも悲しみも全部、涙と一緒に洗い流されていった
翔太は、泣いてる私を横にして、何も言わずに空いた左手をギュッと握ってくれた
その体温が心地よくって、私はますます彼が愛しくなった

夜の風すら、温かく感じた

あつこ 著