スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

めざめ (作者:あつこ)

めざめ【5】

サオリさんは、ぼうっとして俺の話になんて興味が無いようだった
車や人が行き交う地面をずっと見ていた

死ぬのは、怖い。

痛そうだし、死んだあとどうなるのか分からない。
誰にも会えないのかもしれない、何も食べれない。


思い返せば小さい頃からいつも独りだった
お父さんなんて会ったことも無い、生きてるのかすら知らない
お母さんはそのせいか毎日よく分からない仕事で真夜中に帰ってくる

時々、お金をポン、と置いて何日も帰ってこないこともある

お母さんはたまに早く帰ってきたとしても、お酒を飲んだりしているし

シワクチャになった5千円札を俺に握らせて
「これで、何時間か遊んでいな」と家を出されて誰か、知らない男の人を家に入れたのを見た
俺はなんだか寂しくなって、その5千円でゲーセンで遊んだ。


小さい頃、俺に合わせたい人が居ると言ってまた知らない男の人を家に呼んで来た
ここから先はあんまり、覚えてないんだけど
男の人は俺を見て怒って帰ってしまって母さんは「俺が居るから駄目なんだ」と言って、泣かれたことがあった



母さんは、多分俺が邪魔だ。
居なくなって欲しいと思ってると思う。

友達、も馬鹿の俺を邪魔に思ってる



俺は―、必要な存在か?居ても良いのか?
分からない、誰か教えてくれ。


でも、

サオリさんは俺に話しかけてくれた、希望が少し差し込んできた気がした
少なくともこの人は、信じたい。
心がざわつく、風にあおられたからだろうか

サオリさんはその間もずっと地面を見ていた
俺のことなんて見向きもせずに

あつこ 著