スピッツ歌詞研究室 オリジナル小説
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日曜日 [作者:ゆみ]

煙草の火種がベランダから、落ちる。無風だから、そのままほぼ垂直に下に向かう。
私の真下の道路には人影が見えない。火種が。その火種が誰かに当たって、誰かを焼死体にすればいいのに。そうなればいいのに。
同じような場面を、なんかの本で見た気がする。うん、あった気がする。
一体どんな心理的作用。はたまた場面効果。何かを燃やすということで違う性質のものに変えたかった。
魔法のように間接的に誰かを殺めたかった。純粋にそうなれば、素敵なことだとおもわれた。きっと、どれも違う。
でもたぶん5パーセントくらいは正直なところ。

雨。小雨。
増水した河川を欄干からみる。
左の河川沿いにコンビ二がある。ネオンの光がにじんできた。私は、4階から6階立てのオフィスビルに囲まれている。
私を中心として50メートルの半径の円の中にビルがこつこつと立っている。でも関係はない。橋の上にいるから。
橋の下には水があるので。水はいい。いいなあ。いいのか。いいだろ。いいよね? いいかも。

こんな小雨がぱらつく日曜日だった。
時期が時期だけに、とても寒かったと思う。寒いのはきらいじゃない。雨が降るのもきらいじゃない。
でもこの二つが合わさると、それがねじれて一転する。気持ち悪いくらいになる。赤と青を足して紫になるみたいにはいかない。
ただの一要素でしかないのに、悲劇的にもそう変化してしまうのだ。
私、キリシマにとって、その日はなくてはならない日だと、今になって思う。
だから、毎週日曜、夜の11時20分になると、死んでしまうような、また生まれてくるようなへんな気持ちになる。
私の礼拝の時間。私の懺悔の時間。私の至福の時間。
へんな気持ちになったキリシマ、私は同じように変な気持ちになっているサカシタを想像する。
サカシタは、でもどうだろう。たぶん、この気持ちは共有なんてできない。「しってる。」そこだけ言葉に出た。
いわなきゃよかったと思った。いってよかったとも思う。

「来週日曜ひま?夜」
「ひま。夜なら」
「じゃあ、再来週の夜は、日曜日の?」
「ひま。夜なら」
「次の次の日曜は?これも夜」
「大丈夫」
「今月最後の日曜は?もちろん・・・・・・」
「夜」
「うん、そう」
「いいよ」
「じゃあ、三年後の二月の第一日曜日、暇?」
「お願いします」
「キリシマ、でよければ」
「ありがとう。サカシタより」
「うん」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ぷーぷーぷー。
切れた。
切った。

あのね、私は心配していってんの。
あんたのこと。おせっかい承知で言わせてもらうけど、やばい、くない?
あんた。このままどうなってもしらないよ?死ぬよ?死んで化けてでるよ?てかそこまでやつれちゃむしろ出れないよ?
ゆう、聞いてる?サカシタもう、ゆうのサカシタじゃないんだよ。いやー。だってそうでしょう?
ゆうにはちゃんともう、素敵な相手いんだよ。来月、挙式あげるし。籍にもはいるし。それは分かるよね?事実だから。
三年前は、前だよ?今じゃないからさ。そこんところ、なんてゆーのかな、もうケジメ??みたいなのつけないとってかそれより寝れてる? 
幽体離脱寸前みたいな顔してんだよ、まじ。

友達の多い友人Aにそう言われた次の日、私はサカシタに殺された夢をみた。
白い部屋に二人きり。私は紐で体を縛られていた。裸のままで。
その状態で、サカシタがずっと私の方をみるから、恥ずかしくなって、私が死ぬという、クリーンで詩的な殺されかただった。
起きた時、サカシタとやったときのような汗をかいていた。

この川に、煙草の火種が落ちる。火種は細々と弧を描いて降りていった。
まっちをシュッとするような音がどこかでした。
その音につれられて、そのまま、水が全部火になって、川が炎の道になればいい。冬の夜に煌々と輝く大通りになればいい。
そうなれば、きっと、元にもどる。この大通り沿いは輝き、昼はなくなり、夜もなくなり、雨もいらなくなるだろう。

ネオンの光はもうにじまない。

 

プロフィール

名前 坂下ゆう
年齢 19歳
星座 みずがめ座
  趣味 バスケ、サッカー(見るだけ)
  好きな食べ物 魚一般、魚介類NG
出身 秋田県
自己PR 左に同じ

名前 霧島ゆう
年齢 18歳
星座 うお座
趣味 バスケ、サッカー(観賞のみ)
好きな食べ物 親子丼、梅Q
出身 秋田県
自己PR 右に同じ