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愛のことば2 [作者:折り鶴]


煙が、辺りに立ち込めている。
大きな音をたてて、崩れ落ちるビル。
どこかで、だれかの叫び声がする。
ウンザリする様な熱と、腐敗臭に頭がくらくらして来た。
目の前が、やけに明るく感じる。
世界を引っ繰り返したような感覚が、俺を襲う。
今度は目の前が真っ暗になった。
「オイ!大丈夫か!」
仲間の声で我を取り戻す
「・・・ああ。大丈夫、問題ない」
「今、全然大丈夫そうじゃなかったぞ」
心配をしてくれているのは、分かる。
「コーヒーでも飲め」
だが、今は返事もしたくない。
「・・・いつ終わるんだろな」
仲間の問い掛けに答えようとするが、言葉がでない。
そんな俺の状態を察してくれたのか、話を止めた。


支給されているコーヒーを飲んで落ち着こうとする。
テントの中から、外を覗いてる仲間が、こちらを見た。
「銃を持て!早くだ!」
慌てて、傍らに置かれている銃を持ち、外へ飛び出した。
敵兵がテントの中の食料を奪いに来たようだ。
敵兵と言っても、ピストルを持っているだけでもない、
何ら一般人と変わりない、青年たちだった。
よく分からない言葉で、懸命に叫んでいる。
そして、ナイフ片手に襲ってきた。
「同情は無しだぞ」
仲間の誰かが言った。
別に、誰が言ったかはどうでも良い事だった。
「分かってるさ」
銃口を青年たちの一人に向け、引き金を引いた。
ドサリ、と青年が倒れる。

それを見た、他の奴らは必死で逃げる。
いまさら逃げたって無駄な事を。
仲間達も、疲れた目をしながら、続々と撃つ。
「悪いな、お偉いさんの命令でな。
お前らは、別のイキモノなんだとよ」
一人、生き残った奴がいた。
「チガウ!オレもオマエも同ジニンゲン!」
俺たちの言葉を、片言だが理解できるらしい。
「オレタチのクニではミナ愛シ合ッテいタ!
ナゼ!傷付ケ合ワナイトいけなイ!」
  愛し合う
そんな事俺たちにできるはずがない。
俺たちがそんな事して良い筈がない。

「演説、ご苦労様」
俺は銃を突きつけた。
だがコイツは笑った。
「コレハ、オマエ等ノ仲間からとったものダ」
手榴弾をポケットから取り出した。
「お前!まさか!」
コイツはニヤリとまた、笑った。

雲の切れ間から狂った、神が見えた
俺は死ぬ間際だと言うのに、
愛のことばを探している。
煙が、また、辺りに立ち込める。

探し続ける。愛のことば。