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Sky Star Spitz  [作者:ピアノ]

■5

私は、広い草原に立ったまま、ぼうっとしていた。
すると、どこからか風が吹いてきて、私を呼んでいるみたいだった。
目をつぶって、風の元を探す_______

はっと気づいたら、担当医師がいて、私が起きるのを待っていたかのように、ベッドのヨコにいた。
「早樹さん。」
「・・・なんですか」
「・・・君は、もう何ヶ月も持たない。いくら治療しても、直らないことがわかった。調べてみたら、もう治らない病気になっていたんだ。
・・・とても言いにくいのだが、退院してもらう。」
「・・・え、嘘でしょう?嘘だって言ってください!そんな、」
「少しだけ、保険金がおります。だ「お金で済む話じゃ、ないじゃないですか!」
そうか、私は元から運が悪いんだ。だから、そのうち、親と同じ運命にあるんだ。
どうせ歌手活動だって、いい曲が生まれなければ、端っこの隅でうずくまるだけだし。
いいや。
もう、いいんだ。そういう事で。

「・・・わかりました。今すぐ出て行きます。」
「・・・・・・・」
体についていた、点滴や何かは、すべてはずし、着替えて、荷物を簡単にまとめて、手続き書のような物にサインして、病院を後にした。
ふらふらしながら、道を歩いていた。そしたら、後ろから誰かがぶつかってきて、荷物が落ちた。相手は、私を見て、
「!すいません、荷物、拾いま・・・す、って早樹さんじゃないか!」
「・・・もしかして、草野さん?」
「大丈夫?ふらふらしてるし!送っていくよ。僕も家に帰るし。」
「・・・いいんですよ。もう。私は、もう直りやしない病気になっていて、社長にも突き放されたし、病院には、出ていけと言われるし、
歌だって売れていないし、いいんですよ。親戚も、私がどうなったって知ったこっちゃ無いんです。だから・・・いいんです。」
「・・・俺は、早樹さんが居なくなったら困るよ。」
「・・・・・・え」
「俺は、困るよ、早樹さんが居なくなったら!だって」
「・・・!」
突然、抱かれ、びっくりしてからだが固まってしまった。
だって、愛情で抱かれたのは、何年も前だから。
「・・・いやだよ。困るよ。ずっといてよ。今は、売れなくても、明日になったら、売れてるかもしれないよ。だから、歌いたくないなんて言わないでよ。」
「・・・」
泣きそうな声で言われたら、どうすればいいか困る。不器用な私は、どうすることもできなくて、ただただ、抱かれていた。人混みの中。ずっと。

あのときのことがなかったら、きっと自殺していたかもしれない。私ならしそうだから。
今では、草野さんに、曲作りを手伝ってもらっている。もちろん、歌詞は自分でつけている。
本当に、あの日の次の日、突然ヒットし始めて、瞬く間に、オリコン一位になった。
テレビでも、取り上げられるほどになった。取材班もたくさん事務所に押しかけてきて、会わせて欲しいと行ってくる。
決まって、「一番力になってくれる、尊敬するアーティストは?」と聞かれるので、私も決まって、
「スピッツの皆さんです!」
と言っている。

 暖かい日々が 胸にしみこんで
  古い記憶たちが騒ぎ始める
  追いかけていたんだ 星を空を今を____

 



↓目次

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