Sky Star Spitz [作者:ピアノ]
■2
本番。私の予感は、的中した。
曲が始まってしばらくし、ギターの弦が切れたのだ。それも、一番大事なさびの時に。
「やめない雨〜 気づいた・・・え」
どうすればよかったんだろう。泣けばよかった?助けを求めればよかった?
・・・違う。私は違った。切れたまま、歌ったのだ。
「・・その時には もう何も無くって」
歌い続けた。止まらない何かにも、目もくれず。
「ありがとうございました!」
終わった。私は、舞台を走って、そでに逃げた。
すると、そこには番組の一番偉いスタッフが居た。見たとき、私は、からだが勝手に頭を下げていた。
「何やってくれたんだ!番組の価値が下がる!こんな売れてないやつ、呼ぶんじゃなかった!」
もう何を言われてもしょうがない、と思い、頭を下げ続けた。その時だった。
「そこまで言わなくてもいいんじゃないですか?」
「何言ってるんですか、草野さん。あらかじめ、チューニングしておいてくれ、と言ったのに「でも、きちんと最後まで歌っていましたよ。それに、売れてない呼ばわりしちゃいけないと思いますが。行きましょう、早樹さん。」
助けてくれたのは、草野さんだった。
泣いている私の手を引っ張り、スタジオの廊下につれていってくれた。草野さんは、手を離し、黙って行ってしまった。
何も言えなかった。お礼も。謝ることも。
何もできない自分が、嫌になった。
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