Prophetic dream [作者:麻愛紗]
■1
今朝みた妙にリアル過ぎた夢は……一体なんだったんだろう。
見たことのないはずの場所に、独り立ち尽くしていた君。
……そんな君の夢をみたせいか、今朝はうっかり寝過ごしてしまった。
時計を見ると、8時45分。
ハネた髪を直す時間もなく、慌てて家を出た。
もうすぐ春だというのに吹きぬく風は今朝も冷たい。
薄紅色の蕾を木々は付け始めている。
そんな並木道のある商店街を、駅へと向かい駆け抜けていた。
頭の中ではまだ、君のことを考えながら……
君のいる世界と、俺のいる世界の距離は遠く遠く……果てしない。
俺が、どんなに君のことを想っていても……
「君まで届くはずない」 「君は傍にいない」
確かに……そう、わかっていた筈なのに……
「もしかしたら、届くかもしれない」なんて、予想外のことが起きることを願ってしまった。
もちろん、そんなこと起きる筈がなく……何時もより1本遅い電車に乗っている俺がいるだけだった。
……もう1度、たった1度でイイから君に会いたい。
こんな俺の夢がもし本当に叶ったなら……君に話したいことは沢山ある。
何から話したらイイかわからないくらい、沢山の言葉達で溢れている。
君に、その中の1つでもイイから、聞いてもらって……できたら、笑って欲しい。
そうなっても、君の笑顔は……俺の胸の砂地にしみ込んでいってしまうのかな?
君がまだ、少し手を伸ばすだけで触れることのできる場所にいた頃は、本当に小さなできごとでも楽しかった。
子供のようにはしゃいで、ふざけあったこともあったな。
そんなできごとを思い出しながら、俺のいる世界と君のいる世界をつなぎ合せようとしているんだ……
……君がこの世界からいなくなって長い年月(トシツキ)が流れたのに、俺はあの頃のままでいる。
全部……泡がはじけて消える様に忘れられたら、こんな気持ちを知らずにいたのに……そう思ったこともあった。
だけど、今のこの道を選んだのは他の誰でもない、俺なんだ……
周りがわかってくれるかなんてわからないけど、君だけは、わかってくれる気がする。
↓目次
【1】→【2】
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