俺、ラクガキ [作者:龍蛇]
■4
あの男・・・そう。仁だ。
それは二人が出会って、二週間後の午後のことだった。
何だかいい感じだった。この幸せが続くと二人とも思っていた。
大事なことを忘れたまま・・・
ハルは自分が何者か、この世界はどこかまだ分からずにいた。
それなのに、溶け込んだ世界に長く居座っている。
春の午後・・・日差しが森に溶け込むように。
それをジャマするように聞きなれないエンジン音がこだまする。
ハル「なんだぁ?」
マリ「ハルさん!走ってください!」
ハル「えっ、ハイっ!」
驚きを隠せないまま、敬語なんか飛び出して、挙動不審になっていた。
しかし、確かに分かっていた。ヤツが追いかけてきたと。
まさか、追いつかれるとは思ってなかった。
でも追いつかれた。
仁「待てこら!」
ハル「何でくんだよ!」
仁「しっかり説明しなきゃなんないことがあるんでね。」
ハル「聞きたくねぇよ。」
仁「いや、きいとけ。この国は法律が無いし、盗みも悪いことじゃない。」
ハル「じゃあ何でマリを追うんだ!」
仁「こいつが盗んだハネころは、現実世界のものなんだ。」
ハル「つまり?」
仁「現実世界を変えてしまった。現実から追われているんだ。」
ハル「ゲンジツ?俺のいたところ?」
マリ「・・・私、この人についていきます。」
ハル「何言ってんだ!他に解決策なんか山ほどあるだろ!」
マリ「この国のために。行かなければならないと思います」
ハル「でも!」
マリ「あなたは現実が変わってもいいんですか!?そんなの私はいやだ!」
ハル「そうだった。オレは現実の人間・・・」
仁「いいんだな。意外と潔いじゃねぇか。」
(もう、いい)
ハルはよく分からなくなった。
(もう、もう、もう、もう、もう、しらない)
マリは車に乗り込んだ。仁は深々と頭を下げた。
すると、兵隊が車を囲む。
ハル「じゃあ、な。」
マリ「さようなら。今までの時間、楽しかったです。」
兵隊は黒い旗を掲げ、いばらの道を歩き、砂金の渦を蹴散らして、車を追いかける。
マリはこっちを見なかった。でも、確かに泣いていた。
ハルは車を見つめていた。
(マリ。覚えてるか?ソファーに落ちてきたときビックリしたろ?
サプライズだぜ。ウソだけど。さよならだけどさ、愛してるよ、マリ)
?「起きなさい・・・!ほらほら。」
ハル「此処は何処?私は誰?」
母「全く・・・夢でとっても楽しかったみたいね。」
ハル「夢かよ・・・」
(夢の人に恋をしました)
ハルは日記にそう書いた。引越しも終わったし。
まぁ、いいかと思って。
でも、物語は終わってはいなかった。
↓目次
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